かいじゅうたちのいるところ
著者:モーリス・センダック / 神宮輝夫・訳
Recommended:桜庭拓郎
出会いと馴れ初め
この本(絵本ですが)との出会いは、正確には覚えていません。私の母親が保育士をしていたこともあり、家にはたくさんの絵本がありました。絵本は、幼少期に出会ったものがほとんどですが、小学校にあがってからもその後もずっと、ふとしたときに手に取ってきました。(とうとう修士論文で絵本を取り上げたほどです。)この絵本はその中の1冊です。
誰にお薦めなのか
合理的でものごとを知的に捉える人に。アタマが疲れている人に。
お薦めポイント
この絵本には、ことばも擬音・擬態語もない部分があります。「無音(静寂)のにぎやかさ」とも言うべき、不思議な感じが私には感じられます。我々が対人援助者として対象者と出会っているときにも、ことばだけではなく、いろいろな部分から感じ取っていると思います。 “まずは感じようよ”ということを思い出させてくれる1冊です。
感想
私のなかの幼児性(あるいは固着点)をさらす感じがして恥ずかしいのですが、まず感じることは、暖かさと自信(あるいは自己肯定感)です。
自身の中にわいてくる自立心は、(ときに万能的な)自信として現れるでしょう。空想に遊ぶことができ、他者や外界(グループ)に対して、確固たる居場所があると感じたりもします。ときに支配者のような万能感も感じるかもしれません。しかし自身が確保していた(と思っていた)はずの居場所も、ふと立ち位置が変わるとそれを失い、他者や外界(グループ)から「食われ」かねません。
グループの中にいると、居場所の確保と喪失をめぐる緊張感を感じることがあります。途方もない孤独感を感じることもあります。そんななかで、自身の中に戻ってこられる「基点」を感じる時の安心感はとても大きなものです。
その「基点」は、「自我の太さ(強さや柔軟さ)」で表せるでしょうし、この絵本で起きていること(またはとあるグループ体験)は、マーラーの分離固体化の過程を連想させます。
印象に残ったフレーズ
ネタばれになるので具体的なフレーズは避けます(「ネタばれ」っていう言い方、書評やおすすめでは変ですが)。ただ最後のフレーズには、主人公マックスの「基点」がこれ以上ない表現で表されていると感じます。