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当たり前のことに気付かされ

 私は若い頃から新聞や雑誌の読者投稿コーナーが好きだった。以前は、何故好きなのか分からずにいたが、今になって考えてみると、出会うことの出来ない他の人がどういうことを考えているのか、知りたかったのかもしれないと思う。テレビドラマや小説が好きなのも同じ理由なのではないかと思う。それが今、私が集団精神療法を勉強していることにつながったのだなと、最近私のなかでつながった。


 コラムとは何を書いたら良いのかしらと思いながらも、最近あったことを書こうと思う。

 私は、職員数が100人位の小さな病院の精神科デイケアのスタッフをしている。デイケアメンバーはだいたい固定しており、数年間参加しているメンバーも多い。そのため、一人一人のメンバーのことをだいたい理解しているつもりになっていたが、先日その考えを改めさせられることがあった。

 時々病院に実習生が来る。その際には自己紹介タイムをもつのだが、名前だけだとつまらないのでその日ひとつテーマを設けて自己紹介をすることになっている。テーマはその日の日直のメンバーに考えてもらっている。はじめの頃は「趣味は?」や「好きな食べ物は?」であったが、だんだん「行ってみたい国は?」であったり「この秋にしたいことは?」と、少し考えないと話せないものになってきた。私もだんだん楽しくなり、もっとひねったテーマにして欲しいとハッパをかけた。そして先日、とうとうよく知っていたはずのメンバーの意外な話を聞くこととなった斬新なテーマが登場した。

 それは「実現不可能でもなりたかった職業は何?」である。私は恥ずかしながら劇団四季などのミュージカル俳優と話した。メンバーたちの答えは私の想像を超えるものだった。プロ野球の監督、教師、宇宙船の飛行士などなど、とにかくほとんどのメンバーの回答がいちいち私をおどろかせ、何故そう思ったのかと話を深めるにつれて、知っているつもりになっていたメンバーの知らなかった面をみて、びっくりした。人には知らない面があるという当たり前のことに、改めて気付かされた。


 これからも、人の知らない面を知ることを楽しみにし、人のことを分かったつもりにならないようにしたい。自分は、ミュージカル俳優になりたかったといっても、人前で何かを表現することを苦手と感じている。これからは、恥ずかしがらずに、自分を出せるようになりたいと感じている。


安部 康代

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